意外と簡単♪とにかく作ってみよう




TOP > スピーカー工作
> 意外と簡単♪とにかく作ってみよう
 








FE-167E



DS-16DF











第1図:板取り(クリックで拡大)






第2図:組み立てイメージ
(クリックで拡大)
■ユニットと木材を選ぶ
 それでは実際に自作スピーカーの実例をご紹介しよう。ここでは初めて自作に挑戦する方を対象に書いていくことにする。したがって難しい理論は抜きだ。本当の自作の面白さは、自分で設計から行うことだが、それは次の段階に取っておこう。まずはどれだけスピーカー作りが簡単なものかを感じていただきたい。

 スピーカーは千差万別であるが、初めて作るのだから、
1)シンプルなこと。2)2本で1万円以内。3)ミニコンポには負けない。4)6畳間の自室でも使える大きさ。こんなコンセプトを立ててみた。

 では肝心のスピーカーユニットは何にしようか。まず大きさ(口径)である。一般に口径が大きい方が低音は出るし、見た目も偉そうだ。しかし、エンクロージャ(箱)も大きくしないといけない。コストが上がる。高音が出ない。などのデメリットも出てくる。逆に小口径ユニットは、小さな箱にできるが低音が出ない。となるとコストも考えユニット一個で、なるべく広い範囲の音域をカバーするとなると、中くらい(16cm)の大きさのフルレンジタイプのユニットになる。

 具体的にはFOSTEX社のFE-167Eあたりがお勧めだが、秋葉原で買っても、一本5000円以上してしまう。他に何かいいユニットはないかと探していたら、ダイトーボイスのDS-16DFというのがあった。これだと一本2600円で買えそうだ。しかもこのユニット、私が初めて自作した時のユニットにそっくりだ。ブラックフェースのダブルコーン仕様。なかなかの面構えである。

 なお、ユニットを秋葉原や日本橋(大阪)の専門店に出向いて購入できない場合は、ネット通販で入手できる。なんて便利な世の中だ! 秋葉原のコイズミ無線キムラ無線が双璧なので、リンクしておく。

 さて、ユニットが決まったら次はエンクロージャである。ここでも最初は、安くて工作がしやすく、性能がしっかり出るものがいい。私はラワン合板をいつも使っている。これは近所のホームセンターでも購入可能である。場合によっては裁断もしてくれる。厚さは15mm厚。他にもいろいろな木材があるが、今回は迷わずこれでいってみよう。
 

■用意するもの
 なるべく少ない準備で作りたいが最低限必要なものがある。以下にご紹介するので揃えていただきたい。
 ●素材
 
・16cmフルレンジユニットx2 ・15mm厚ラワン合板(910x1820mm)x1枚 ・スピーカーコード2m〜 ・吸音材
 ●工具類
 ・ノコギリ、回し引きノコギリ、キリ (以上は自分で裁断する場合)
 
・木工用ボンド、釘(32mm)、かなづち、カッター、プラスドライバー、ガムテープ、ハンダこて、ハンダ、ニッパー、ハサミ、釘抜き

 少し補足しておくと、吸音材はグラスウールが安くてオススメ。キムラ無線の通販で手に入る。アオキ産業の60x90cmのものが1枚あればいい。スピーカーコードはユニットから配線を外に引き出すもの。あまり細いものは敬遠したいが、そんなに高級なものは不要。

 自分で裁断する場合はノコギリ類が必要。特に丸く穴を開けるのは大変なので、DIYショップにお願いできれば、それがベター。それでも自分で切る場合は、まず合板に裁断図を書き込む。この時、板と板の間は3mmあけておいてほしい。のこぎりでその分目減りがあり、寸法が短くなるためだ。


■基本に立ち返る
 さてそれではエンクロージャの設計図面をみていただこう。第1図が板取り。第2図が組み立てイメージだ。これを組み立てると高さ40cm、幅30cm、奥行26.5cmの直方体が2個できあがる。前板にはユニット取り付け用の直径145mmの穴を開ける。第2図を注意してみてもらいたいのだが、裏板の下のほうに1cmのすきまができるようになっている。これは寸法間違いではなくて、ここから低音が放射されるしくみなのだ。この手法を「バスレフ」と呼んでいる。細かい理屈は省略するが、今回は80Hzの低音が特に放射されるように設計されている。
 

 偶然というか当然の帰結というか、設計がまとまってみたら、私が最初に作ったスピーカーにとても似たものとなった。実は低コストでバランスよく鳴るスピーカーを作ろうとすると、この形がベターなのである。本当はもう少し大きいエンクロージャの方がたっぷりと低音が出るのだが、住宅事情を考えて、できるかぎりコンパクトにした。ただし、合板にあまりがあるので、できる人は高さを50cmに変更してもらってもよい。実はそれでも設置面積、スペースファクターは変わらない。その代わり、エンクロージャ内部に少し補強を入れたほうがいいかな、という感じになる。今回はシンプルであることにこだわったので、補強を入れなくてすむ大きさにとどめたのだ。

なおユニット用の穴であるが、このサイズだとDS-16DFでも、FE-167EでもOKだ。予算に都合がつくなら、FE-167Eにチャレンジしてもらってもよい。


■あっという間に組みあがる
 さて、それでは組み立ててみよう。組み立ては図面にふられた番号順に組んでいけばいい。はじめに釘やボンドを使わず仮組みしてイメージをつかんでほしい。注意すべきは天板と裏板の組み方だ。これを間違うと寸法が合わなくなるので、図をよくみてほしい。

 本組みはまず木工用ボンドをはみ出すくらいにたっぷり接着面に塗る。これを一辺あたり3本の釘で打ちつけていくという方法だ。はみでたボンドは外側は濡れ雑巾などでふき取り、内側は放っておく。接着面の空気漏れを防ぐためにボンドはたっぷり使うのだ。ボンドは乾くと30%くらいに体積が減少することも覚えておきたい。

 さて釘打ちは先に仮打ちをしておいた方がよい。ボンドのすべりで、釘を打つと板がずれてしまう。釘の頭が出ないくらいにあらかじめ打っておくのだ。これで一発で止められる。

前板を取り付ける前に吸音材を天板、裏板、側板の片方にボンドで貼り付ける。大きさはハサミでグラスウールを適当に切って、指定した面のほぼ全体を覆えればよい。そして最後に前板を組み上げる。これを2個作ればエンクロージャは完成である。


■配線について
 さて、いよいよユニットをエンクロージャに取り付ける。まずユニットにスピーカーコードをハンダ付けする。スピーカーには+と−があるので、コードは色分けされてるものの方がわかりやすい。スピーカーコードはバスレフのすきまから外に引き出すことになる。1個当たり最低1mあればいいが、アンプまで一気に引いてしまうときは適当な長さのものを用意する。コードの切断はニッパー。ビニールの被服剥きもニッパーかカッターで行う。ニッパーがなければはさみでも切れなくないが、刃こぼれが心配だ。市販スピーカーのようにターミナルを取り付けてもいいが、これはもう少し慣れてからやってみよう。あとでコードを引っ張って、ユニットの端子を壊すことがないように、ガムテープで底板にコードをとめておくとよい。

 次はユニット付属の木ねじでユニットをエンクロージャに取り付ける。この時ユニット付属のパッキンを使って、ユニットと板のすきまから空気がもれないようにする。ユニットによっては、パッキンや木ねじが付属されてないことがあるので、その場合は市販の木ねじ(太めで長さ20mm程度)やすきまテープで代用できる。

 ここまでくれば、あとはアンプに接続するだけだ。+,−を間違いないように注意してアンプのスピーカー端子につないでほしい。


■早速鳴らしてみよう
 いよいよ「火入れ」である。オーディオの場合、電源を入れたり、音を出すことをこう呼ぶ。最初は意外とガサついた音かもしれない。実はスピーカーは少し使ってからでないと本領を発揮しない。人間だって準備運動が必要だ。しばらく鳴らしてると音がしなやかになってくるし、数日後に改めて聴くとさらによくなっているということがままある。

 もしミニコンポを使っていて、このスピーカーに交換した場合は、かなり音色が違ってくると思う。中高音はメリハリが利いて元気よく、低音はちょっと物足りないかも、という人が多いのではないか。ミニコンポはCD、アンプ、スピーカーで欠点を補ってバランスをとっている。スピーカーだけよくするとバランスが壊れるのだ。しかし聴いてると、このスピーカーのほうがいろんな音がCDに入ってることがわかってくる。低音の不足はバスコントロールがついてると思うから、遠慮なくそれで好みにあわせてもらってよい。

 そうそう言い忘れたが、設置も重要だ。右と左を間違えないように。意外とオーディオのベテランでもうっかりこのミスを犯す。このスピーカーは裏面にバスレフの穴(すきま)があるので、後ろの壁にピッタリくっつけてはまずい。5cm10cmでもいいから後ろを空けてほしい。床にそのまま置くか、台に載せるか、左右はどのくらい開くか、細かいことはいろいろあるが、ここでは書かない。自分で作ったスピーカーなら、あれこれどうやったらよく聴こえるか試すパワーも沸いてくる。とにかく自分で実践すること。それが大切だし、楽しみなのである。


■仕上げについて
 板の裁断をDIYショップにお願いすれば、このスピーカーは2-3時間で完成してしまう。より愛着あるマイ・スピーカーとしてつきあっていくなら、仕上げも大切だ。ただ仕上げはきれいにあげようとするほど、かなりの手間と時間がかかる。ここでは細かい工程は割愛するが、基本的なことだけおさえておく。

 まずエンクロージャはサンドペーパーで磨く。#180-240くらいの目が表面を滑らかにするのに好都合。接着面がずれて削る必要があるときは、カンナや#40のサンドペーパーあるいは粗目の木工ヤスリが必要だ。その後、ビニールシートや壁紙でお気に入りの色や柄のものを貼るのが一番簡単。塗装の場合はもうちょっと手間が必要で、目止めや下塗り、なんて作業をしなくてはいけない。でもここまでやると愛着もさらに沸くんですけどね。

 さあこれでスピーカー工作の基本はマスターだ。よりよい音、より自分の好みにあわせたものを求めてみようと思われた方は、ぜひ当サイトを読み進めていただきたい。また個別のご相談にも乗れるので、ご一報いただければ幸いである。


χανι