実際に作ってみた!製作記




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DS-16F



DS-16DF






第1図:板取り(クリックで拡大)




@裏板とダクトを接着



Aそれに天板をつけ



B側板の片側を組む











測定はザビスタでSH-8000
を使い行う。
測定位置は試聴位置。
約2mスピーカーから離れる




これがSH-8000付属の
測定用マイク。
20-20kHzまでフラットに
測定できる。


■ザビスタ・モデル16 製作記
 何事も自分でやってみなくちゃわからない。いくら図面や手順を紹介したところで、あとは人任せではあまりにも無責任。ここは自分でイチから作ってみて、実際にどうなるかレポートしてみよう。

 まずはネーミング。16cmユニットのシンプルなバスレフスピーカーだ。あまり凝らずに「ザビスタ・モデル16」とする。後述するが、ユニットは2タイプあるので、一方がモデル16F、もう一方がモデル16DFとなる。結果として、工作が簡単で音のいい1万円スピーカーができた。ぜひ、参考にしていただきたい。


■用意するもの
 なるべく少ない準備で作りたいが最低限必要なものがある。以下にご紹介するので揃えていただきたい。
 ●素材
 
・16cmフルレンジユニットx2 (DAITO社 DS-16F、あるいはDS-16DF)
 ・15mm厚ラワン合板(910x1820mm)x1枚
 ・スピーカーコード2m〜 ・吸音材(アオキ産業グラスウール60x90cm)

 ●工具類
 
・木工用ボンド、カッター、プラスドライバー、ガムテープ、ハンダこて、ハンダ、ハサミ、ハタガネ
  (今回はクギではなくハタガネで組み上げた。一般にはクギ(32mm)で組めばよい)

 
■ユニットの選定と特長
 今回は安くて音のいいスピーカーということで、ユニットをあたった。幸いDAITO社製の16cmユニットがこれに該当した。16Fはコイズミ無線で1本1750円。16DFは2600円だ。画像では区別がつきにくいが実物はやはり16DFが高いだけあって、高級感がある。コーン紙も丈夫そうだし、マグネットも大きい。仕様を以下にまとめておこう。

  DS-16F DS-16DF
価格 1750円 2600円
最低共振周波数 85Hz 79Hz
再生周波数帯域 fo〜18kHz fo〜15kHz
インピーダンス
出力音圧レベル 92dB 90dB
入力 10W 20W
バッフル開口径 145mmφ 145mmφ
重量 510g 740g
マグネット径 7cm 8cm
 (コイズミ無線ホームページより。マグネット径は実測)

 気になるのは、16DFの方が高音が出ない印象が読み取れる。おそらくコーン紙が重いのだろう。それをより強力なマグネットで駆動するという考え方。音圧レベルは中域で取る。明らかに16Fの方が元気がよさそうだ。値段も安いし16Fの方がお得か?しかしこれは実際に作ってみないとわからない。幸い開口径が同じなので、同じ箱に取り付けられる。ボックスは1式(2個)作って、どっちがいいか検討できる。


■ボックスの設計と図面
 綿密な設計計算をするなら、仕様としてQo、moなども知りたいが、それはデータがない。でも経験的に見た目でだいたい判断できるし、今回はなるべくコンパクトで十分な低音を出す、という考えがあるので、自ずとボックスの大きさは決まってくる。この手のユニットは大型の箱に入れるとゆったりとした量感豊かな低音が出るが、置き場所の問題もある。バッフル効果を得るためにやや正面を広くして、奥行きは薄め。高さはブックシェルフタイプサイズとする。外寸幅30cm、高さ40cm、奥行き26.5cmで決定。

 別項で板取を示したが、若干修正を加えて、今回製作したのが第1図。何が違うかというとダクトを追加した。別項ではシンプルを最優先して、バスレフのダクトは板厚のみの15mmとしたが、本モデルでは40mm追加して全長55mmのスリット型ダクトとする。これによってfd、つまりダクトの共振周波数が80Hzから58Hzに下がる。ユニットの能力を考えるとちょっと下げすぎかもしれぬが、やはり60Hzくらいまでは低音がほしい。なんとかがんばってもらおう(^^ゞ


■組立について
 さあ、いよいよ組立だ。左の画像も参考にしていただきたい。板取図の番号順に組み上げていけばいい。仮組みをして接合面を間違わぬよう確認して、木工用ボンドを塗り、クギかハタガネで止めていく。ボンドははみ出すくらいでちょうどいい。乾かぬうちに濡れ雑巾ではみ出た分はふき取る。

 ダクト板と底板の間は1cmのスリット状の隙間ができる。ここがバスレフダクト。低音を増強する仕掛けである。

 グラスウールは前板を取り付ける前に入れる。3面に木工用ボンドで接着すればいい。裏板用は27*34cm、天板用は27*21cm、側板用は22*30cm程度にハサミで切っておく。

 ユニットにはケーブルをつないで、箱の外にはダクトから引き出す。+,−を間違わないように確認しておくことと、ケーブルはユニットの端子に最終的にハンダする。またケーブルは底板にガムテープで止めておくとユニットの端子を壊さなくてよい。

 ユニットとボックスへの取り付けは、付属の木ネジ。ユニットとボックスの間に隙間があると空気漏れが起きてまずい。その場合は隙間テープを使用するが、今回は隙間テープは不要だった。音質もこの方がいいはずである。

C底板、もう一方の側板を組む D天板、裏板、側板の片面に
グラスウールを貼る
E最後に前板を組めば
ボックスは完成

    
      配線したユニットを取り付け、2本組み上げれば完成だ


■試聴と測定
 さあ、ここまできたらまずは音を出してみよう。最初にDS-16Fを取り付けて鳴らしてみる。かなり元気のいい音だ。最初はちょっと粗いが、鳴らすうちにすぐに滑らか音になってくる。慣らし運転をしばらくしてCDを試聴。

 ボーカルは綾戸智絵。リアルである。POPS系ではサザンも聴いたが十分な音質。フルレンジユニットを使用し、アンプとの間に余分なものが入ってない。軽いコーン紙、ネットワークなし。これがメリハリのあるハイレスポンスな音の秘密だ。さすがに超低音は再生できないが、ロック、民族音楽を再生しても無難にこなす。総じて明るく元気のいい音。パワーはそれほど入らないが、家庭での大音量は十分可能である。

 さて次にユニットをDS-16DFに変更。同様に慣らし運転をしてから試聴。一聴して16Fより控えめで大人の音であることがわかる。能率も少し落ちるから音量が小さい。しかしよく聴いてみるとこちらの方が本物に近いことがわかる。仕様にあった超高音の不足は全く感じない。低音は相対的に量感がある。最初は16Fの方がいいかと思ったが、聴き続けるとやはり16DFは値段が高いだけのことはあると感じる。

 それでは周波数測定をしてみよう。まずは16Fをみてみよう。
 部屋の影響があるので、若干右と左で特性が違うが、傾向は大変よくわかる。低音は100Hzにピーク、中音は800Hzピーク、高音は4kHzピークとはっきりしていて、これでメリハリがついている。160-630Hzあたりがもう少し出てくれるとバランスがいいが、聴感上はすっきりした音として聴こえる。超高域、超低域は多くを望めないが、50Hz〜16kHzは特性としてキープできてる。

 次に、16DFだ。
 一見して高域がなだらかに下がっているのがわかる。800Hzのピークは気になるが、あとは50Hz〜20kHzを十分カバーしている。仕様では15kHzまでとなってるが、超高域はむしろ16Fより伸びてるといってよい。

 ダクトは計算上58Hzになってるが、50、63Hzがやや持ち上がってるので効果が見て取れる。また聴感上は十分その効果は聴き取れる。100Hz近辺の量感が十分。中域、高域とのバランスもいい。

 では、16Fと16DFを比較してみよう。
 いきなり能率の違いに目が行く。仕様では16Fが2dB高いことになってるが、たしかに中域はそのとおり。ただ高域は5dBは差がある。ここで音質の違いが大きく出る。20kHzは明らかに逆転しており、16DFのパフォーマンスが高いことを証明している。


■終わりに
 このあとは仕上げということになるが、これは後日別項で紹介しよう。まずはこの試聴・測定でモデル16シリーズのパフォーマンスがお伝えできたと思う。J-POP系を聴くなら16Fがいいかもしれない。コストも安くつく。フラットなオーディオ的な再生を求めるなら16DF。2000円のコストアップになるが、その価値はある。

 
ダクト板の長さを4cmから3cm、あるいは2cmにしてもいいが、全体的な音のバランスは変わらないと思う。あとはセッティングでも音質は変化していくが、このノウハウもいずれ別項で語りたい。本モデルは近日ヤフーオークションに出品してみたいと思う。

χανι
(c) studio XAVI ,2006   http://studio-xavi.com/