ほとんどのCDが間違いだらけ?

 


TOP > オーディオ・録音
>ほとんどのCDは間違いだらけ?







































■CDは音がいいのか悪いのか
 CDが世に出て、20年以上が経った。当時CDはデジタルだから音がいい、という説と、いやいやアナログ(LP)に比べたら音が悪い、という説でひとしきり議論が沸きあがった。今ではそういう議論さえも起きないほど、オーディオ自体が衰退してしまったが、それでも、CDは、他のメディアとともにまだまだ現役でがんばり続けている。

 さて、私は「CDは音がよい」という考え方である。オーディオマニアを自負すると、「CDはアナログに負ける。せめてスーパーCDじゃないと」などとしたり顔をする向きもあるが、単純に普通にCDを聴いてると「これで十分じゃん」と思うことのほうが多い。実際、MP3やMD、さらには携帯電話で音楽再生が主流になってきている現状は、CD音質でも十分過ぎる、という証のようにも思う。

 では現状販売されている音楽CDが完璧かというと私はYESと言えないでいる。音楽CDというのは、アーティストの作品を記録し、それを多くの人々に聴いてもらうためのメディアである。何を重視するかでモノの見方は変わってくるし、現状のCDは多くの条件をクリアしたベターな製品とも言えるが、こと音質あるいはオーディオ的視点から見ていくと満足のいかない部分があるのだ。

 それはCDのスペックが物足りないとか、製作機材が悪いとか、制作エンジニアの腕が悪いとかいうものではない。ただ「いい音が聴きたい」「オーディオ的に満足のいく再生がしたい」というレベルで向き合うと、もっといい音で作れるはずなのに、と思える部分があるのである。

 その原因は主に収録方法に起因している。現在のレコーディングは、クラシック、ジャズ、ロック、J−POP、どの分野でもマルチマイク録音が主流である。つまり各楽器ごとにマイクを立てたり、ラインを引いて個別に収録し、あとから編集を加え、ミキサーで合成してひとつの音楽にするという方法である。

 この方法は商業用音楽CDを制作するためには、誠に効率がよい。アーティストはミスを何度も修正できるし、制作サイドもイメージどおりの編集が行え、補正も自由に行える。そして何よりリスナーがヘッドホンやミニコンポでこれらを聴く時にあわせて最適の音作りができるのである。

 世の中のほとんどの人には万々歳なのだが、そのために本物の演奏を届けたいアーティスト、本物の再生を行いたいオーディオファンには、なんとも歯がゆい商品が出回ることになるのである。


■誰のためのCDなのだろう
 オーディオファンを自負する友人たちと会話をしていると、先に述べたような「不満」が必ず出てくる。私の聴く音楽はロックが中心なので、もちろん、音質にこだわりがあると言っても「被害」はそれほど大きい方ではない。むしろ深刻なのはクラシックファンでオーディオファンの人たちだと思う。クラシックやジャズの基本はライブ演奏であり、コンサートホールやジャズクラブで聴いた演奏を、そのまま家でも再現したいという要求が強い。その時にマルチマイク録音では、臨場感と呼んでるが、その場の雰囲気を全く再現することができないのである。

 たしかにCDはデジタル化によりノイズも少なく、再現性に優れたメディアである。そこに収録されてる演奏も優秀な製作機材とエンジニアのおかげでそれなりのものに仕上がっている。しかし、元の収録方法が現場を再現できない方法で行われている以上、そこには「本物の音」は収められていない。私はこの悩みは、ごく一部のオーディオファンあるいはマニアと呼ばれる人たちだけのものかと思っていたのだが、どうも最近そうではないということに気づき始めた。

 一介の単なるオーディオ好きの私が運良くプロのミュージシャンの方々と接する機会を得ることができるようになり、彼らの演奏や考え方を耳にしたときに、実は本物のアーティストたちはこのような現状を決して良しとはしていないことがわかってきたのだ。彼らは多くのレコーディングの現場で演奏し、自分の意図した形と違う形でその演奏がCDに収録され、リスナーに届いてることを知っているのだ。それは私が先に述べた臨場感だけでなく、多くのエフェクター(一般にわかりやすい例はエコーか)を使われることでリアリティをむしろなくす方向にレコーディングがなされることもあるようだ。

 もちろん彼らもいつも完璧な演奏ができるわけではないから、個別に収録した演奏をあとから編集でいいとこ取りをしてもらえるのは助かる部分ではある。でもプロの耳が、果たしてそれでいいのか、と疑問を投げかけ続けてるということも事実なのだ。

 繰り返しになるが、商業用の音楽CDを大多数のヘッドフォンステレオリスナーに買ってもらうためには現状の収録方法がベターである。でも本当のCDのよさ、オーディオのよさ、アーティストの演奏のよさに接するために採算を度外視したCDが作られたらうれしいな。と私は常々考えているのである。


■私なりの高音質CDとは
 では、どうしたら私のいうところのオーディオマニアも納得のCDが作れるのだろうか。実はそれを実行している小さなレーベルは日本、あるいは海外にも存在している。決して私が発明したわけでもなく、あるいは突拍子もないことを言ってるわけではないのだ。

 本物の音作りを目指してる連中が採用してる収録方法のほとんどは、ステレオペアマイク録音である。一部呼び方でワンポイントマイク録音とされることもあるが、厳密に言うと、ワンポイントマイク録音というのは、ひとつのマイクに左と右のマイクが並んでついていて、それで収録する。ステレオペアマイク録音というのは、普通のマイクを左右それぞれに一本ずつ用意して、適当な間隔にマイクを設置して収録するものを言う。私もこのサイトを立ち上げるに当たり厳密に呼ぶか考えたが、ワンポイント録音という呼称が、マルチマイク録音に対しての総称として、ステレオペアマイク録音を含んで使われることもあるので、今回は通りのよい「ワンポイント」という言葉を使わせてもらっている。

 さて、この2本のマイクだけで収録する方が、たくさんのマイクを用意して収録するより、「本物」だというのはどうしてなのだろうか。理由は人間の耳が2つ左右についていて、これで前後左右上下の音を聞き分けているというところに起因する。難しい原理はここでは置いておいて、ともかく人間の耳が2つだから、マイク2本で録音すると、耳で聴いたとおりに録音できるのだと考えてほしい。

 もうひとつ重要なことは、録音した音をCDにするまでの工程を極力シンプルにするということである。この部分は料理とよく似ている。新鮮な食材は極力手をかけずに最小限の調味料と調理で食するのが一番美味い、という考え方だ。もちろん、なかには手間隙かけて調理をしたものをよしとする人や、調味料をガンガン入れないと食った気がしないという人もいて、それはそれで結構なのである(余談だが私はジャンクフードが大好きだ)。

 話を戻すと、そういうわけだからひとつの方法として、ライブ演奏を待ったなしの一発録音で、ワンポイント収録し、これに余計な手を加えることなくCDにしてしまう。これが現状考えられる「本物のCD」づくりと私は考えている。


χανι