■マイクの重要性を考えてみよう
オーディオマニアであっても、自分で録音をしない人間にとっては、マイクは不要のものである。しかし、自分で録音をする、あるいは音楽活動をされる方にとってはマイクは重要なアイテムのひとつとなる。しかし、私もそうだったのだが、図体が小さいせいもあってか、スピーカーに比べてマイクは軽視されがちである。軽視とは金をかけないと言い換えてもいい。
極端に言うと、スピーカーに10万円かけるなら、マイクにも10万円かけないといい録音はできないと思ってよい。しかしそこまでやってる人は稀だろう。マイクのうしろのレコーダーや再生機器がどんなに優れていても、おおもとの音が間違っていたら、ちゃんとしたオーディオ録音再生は不可能である。
たとえばこれはカメラ・ビデオの世界でも同じだ。重要なのはレンズなのである。たとえば、高級デジカメと最新のカメラ付携帯のカメラ機能は何が違うかと言ったら、レンズの違いだけと言ってもいい。ともかくオーディオもビデオも入力部分が大事。ここではマイクについて測定結果も踏まえながら考えてみよう。
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 RP-3800E |
■ザビスタの3つのマイクをテストした
ザビスタには現在以下の3つのマイクがあった。
1. テクニクス RP−3800E
(測定・音楽収録用。ザビスタのメインマイク。1本12000円)
2. ソニー ECM−290F
(音楽・会話収録用。サブマイク。1本27000円)
3. ソニー ECM−MS907
(小型補助マイク。ワンポイントステレオタイプ。1ペア10000円)
通常はRP-3800Eを使用するが、講演などの音声収録には向かないので、その場合はECM-290Fを使用している。値段的にいえば、290Fが上級であるが、3800Eは音響測定用の特殊マイクで普通の録音には使いにくいのだ。290Fはそれなりにオールマイティに使えるように作られている。その辺が価格差である。ただ音質はどうかというと高い方が勝つとは限らない。この辺が面白い。MS907はバックアップ用のDATに使用する小型マイク。しかしなかなかの性能を持っている。
■音質の差を何で見るか
オーディオの面倒で面白いところは、いっしょに聴けばすぐに理解できるのに、このようなテキスト上でそれを伝えるのが難しいところである。 一言で「これは音がいい」といっても、どう音がいいのか?AとBを比較して、どちらが優位と示せる証拠は?と考えていくとなかなか大変なのだ。
私は視覚的にも一番わかりやすいのは「周波数特性(F特)」だと考えている。もちろん、F特がよければすべてに勝るというわけではない。F特は低域から高域までフラットなのがいいわけだが、実際には無理やりフラットにするために色々こねくりまわしたシステムより、シンプルにまとめたF特イマイチのシステムの方が音が元気でクリアで明らかに軍配が上がる時がある(その方が多い)。
ただそれでも基本はF特だ。F特表をみれば多くの情報を得られる。そして最後に実際の音を聴いて、自己の判断で”好みの”優劣をつけてあげればよい。と、いうわけで、3種類のマイクのF特を測定してみた。
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ECM-290F

ECM-MS907 |
■周波数測定
では実際にどうやるかであるが、ザビスタのメインスピーカー「イシュタル」から各周波数の音を出して、その音圧を測定する。要は普段F特測定に使っている測定器のSH-8000に各マイクを接続して測定値をとるのである。
イシュタルといえども完全フラットのF特ではない。しかし、超低域の20Hzから超高域の20kHzまで満遍なく再生している。基準となるのはSH8000の測定専用マイク。各マイクはこのマイクとの差をみることでほぼ正確な周波数特性を調べることができる。
では実際にどうなったか次の図をみていただきたい。
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SH-8000 |
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■RP-3800Eのフラットさに驚く
まず表の見方だが、縦軸が音圧。5dB間隔で目盛が振ってある。0dBを中心にみてほしい。横軸は周波数特性。左が低音で20Hzから始まり、右が高音で20kHz(=20000Hz)まで測定できる。F特的には0dBの軸に直線が引けるのが一番いい特性ということになる。
さて一目してわかるのは、紫のRP-3800Eが恐ろしくまっすぐだということだ。1-2dBは測定の誤差も考えられるので、完全フラットに近い。RP-3800Eは測定用マイクであるから、その意味で面目躍如である。音質もレスポンスも悪くないので、室内で使う分には最強のマイクと言ってもいいと思う。どんなに優れた音楽用マイクでも、ここまで超高域、超低域をフラットに拾えるものは極めて稀だろう。また普通はその必要はないと考えられているのである。
もう2世代は前になってしまうが、ソニーの名機の誉れ高いECM-290Fは代表的なマイクのF特を示してくれた。これなら80Hzから20kHzはほぼフラットに拾うことができる。特に160Hzから5KHzは文句なくフラットだ。通常の使用ではまったく問題ないし、車の走行音など余計な低域ノイズを拾わなくてすむ。5kHz以上の超高域は若干逓減気味だが、逆にそれがしっかりした中低域の聴きやすい録音につながってるかもしれない。
MS907は公式スペックが100Hzから15kHzとなっている。実際に測定してみると、ほぼそれに当たる結果となった。特徴は能率が高いことだ。他のマイクよりノイズに対して強いということになる。いわゆるSN比がいい、というやつだ。ハイファイ録音にはどうかと思うが、普通に音声を収録したり、チェック用に音楽を録る分には十分だろう。元気のいい録音が期待できる。
■ザビスタはワンポイントペアマイクステレオ録音を推進します
以上、F特からマイクについて考えてみた。改めてRP-3800Eを使うことの意味を確認することができた。一般の音楽録音は複数のマイクを各楽器に配置するマルチマイク録音だ。別項でも述べてるが、この方式では本物のステレオ録音は困難である。擬似的にステレオの音場を創生することで作品を作っていくことになる。ただそれが現状のCDのほとんどであるし、制作サイドのメリットも高く、通常の再生装置ではその方がよく聴こえるということになる。
ザビスタはその場の音楽空間をそのまま収録することを目指し、たった2本のマイクで空間を生け捕りにする録音を行っている。したがってマイクの性能もモロに出ることが想定される。RP-3800Eを中心によりよい録音を実施していきたい。講演の収録や電子楽器の収録など、すべてにこの方法はあてはまらないが、基準をおさえておくことで、他の録音もよりクオリティの高い仕事を行っていきたいと考えている。
χανι |