そもそもオーディオってなんだ?

 


TOP > オーディオ・録音
>そもそもオーディオってなんだ?
















■オーディオの定義ははっきりしない
 人に「趣味はなんですか?」と聞かれたときに、「オーディオです」と答えればいいのだが、果たして「オーディオ」って言い方で通じるだろうか、といつも思う。「ステレオ」の方が通じやすいかと、そう言う時もある。おそらくこれをお読みいただいてる皆様もそれぞれのイメージを持たれていて、一言でオーディオを把握、説明されてる方は少ないのではないか。

 一番簡単なオーディオの定義は、「
音楽を聴くための再生装置」ではないだろうか。しかし、ではMP3ウォークマンをヘッドフォンで聴くのは「趣味のオーディオ」かというとどうもそうは思えない。趣味と言い切る、あるいは趣味となりえるものは、何かを行うための道具や手段ではなく、それそのものが目的となってないといけないように思う。毎日奥さんが夕食を作るのは趣味ではない。田村正和がこれみよがしに極上の素材と調味料を用意して「どうだ、かあさんよりうまいだろう」というのは趣味の料理である。

 それとオーディオというのは、スピーカーやアンプなどの装置だけでは成り立たない。そこで次のような定義が考えられる。「
オーディオとは、音源と再生装置と部屋とリスナーの相互作用」である。これはかなりいい線をいった定義と自負してるのだが、ちょっと小難しく言い過ぎたか。まあ、言いたいことは、あなたがいて、あなたのお部屋を含むステレオシステムで、CDなどの音源をいかに思い通りに再生するかを楽しむこと、ということだ。

 したがって趣味のオーディオでは、再生装置だけではなく、CDをはじめとする音源(ソース)のよしあしも吟味の対象である。それからオーディオ装置の吟味の際は部屋を含めて考える必要がある。うちでよく鳴るスピーカーを友人宅に持ってったら、ショボイ音になったという経験もある。あと、リスナー、つまりあなたがいるということは趣味として当たり前だが、当人の好みの問題とかもかかわってくることを念頭におかないといけない。

 趣味はなんでもそうだが完璧というものはない。答えはそれぞれにいろいろある。だからああだこうだ、決着のつかない議論を楽しむことができる。私自身もオーディオの理想は持っているが、それが唯一無二の解答とは思ってないし、正反対の音を好むオーディオマニアがいることをよしとしている。自分の理想に向けて永遠に楽しく悩み続けることができる。それが趣味であり、幸せというものだ。


■問題用語?原音再生とハイファイ・・・
 オーディオに携わってると必ず出てくるのが「原音再生」という言葉だ。私が勤めていたビクターのステレオ事業部にもこの言葉が額に飾られていた。しかし、この言葉はときどき否定的な印象で取り扱われることがある。また、同様にハイファイという言葉がある。これはHi-Fiとも表記され、HIGH FIDELITY。つまり高忠実度再生と訳される。今回このふたつはほぼ同義として話を進めたい。

 原音再生(高忠実度再生)という言葉がしばしば否定的に使われる原因は、定義がはっきりしてない、あるいは定義が違うもの同士が議論をするので生じる、というところにあ
る。文字通りの意味は、「原音」すなわち演奏者が演奏した現場をそのままにオーディオ装置で再生する、ということだ。ところがこう定義すると、「そんなことは不可能だ」「音楽とは芸術的人間的なもので、機械的なオーディオが原音などというのはおこがましい」「100歩譲っても、君は今のCDには本物の音が入ってないと言ったじゃないか。それでどうして原音再生ができるんだい?」ということになる。

 私は原音再生はオーディオの重要なよりどころであると考えている。ひとりで楽しんでる分には定義も不要だし、どうぞお好きに、ということだが、同好の士と楽しく真剣に議論するためには明確に定義づけされた基準がないといけない。原音再生をひとつのオーディオの理想、目的とすると非常に有効な話し合いや自己研鑽ができる。そのためにはここで原音再生の定義をしっかりしておきたい。「
原音再生とは、CDなどの音源に入っている情報をありのままに取り出すことである」。

 つまりここで重要なのは、演奏者の演奏の出来やその録音・編集の良し悪しはひとまず置いておくということだ。この部分はオーディオマニアが手を出せない「聖域」で、また別の分野とまず考える。もちろん、優秀なソースを見出して楽しむ、というのはありだし、優秀なソースが市場に出回るように仕掛ける、祈る、願うのも必要だ。しかしここでいう原音再生とは、それは置いておいて、
悪いソースもそのとおりに悪く再生できるのが優秀なオーディオ装置という考え方である。

 いい音あるいは音楽を楽しみたいのはオーディオに携わる人間全員の想いだろう。そのために同好の士と論じ合うことの重要性も同意いただけると思う。そのためには共有できる言葉や定義が必要であると私は考える。原音再生は経典のような絶対的なものではないが、ひとつの基準となりうる考え方だ。その共有認識の上で、「オレの好みはこうだ」とか「このソースはイマイチなので、こういじった方がよい」と論じるのは相手に通じるし、発展的な議論ができるのだと思う。


■音楽とオーディオ、どっちが偉い?
 音楽ファンあるいはマニアで、自分はいい音楽をいい音質で聴きたいからオーディオをやっているのだ、という方は多いのではないか。そしてそのような方々は私の原音再生の考え方を否定あるいはがっかりされると思う。一方純粋な?オーディオマニアは、雷や大砲の音を自分の装置で聴いて「迫真だ!」「リアルだ!」といって喜んでいる。そのような方々の方が私の考えに理解をしめされると思う。

 では私は普段何を「自慢の」オーディオ装置聴いているかというと、音楽である。大砲の音はオーディオチェックに使うことはあるが、別に好んで聴いてるわけではない。音楽(私の場合はロック中心)を楽しむ時は、音質がどうの、オーディオ的仕上がりがどうの、という聴き方はしない。音楽そのものを楽しんでいる。そのときオーディオはCDの中に入った情報を、つまりアーティストの意図を、微細な部分まで取り出すための努力をしてくれている。私と音楽とオーディオの関係は以上のようなものだ。もちろん、逆に音楽ソースを使って、オーディオを楽しむという時もある。この時は、音質、位相、音場、定位、その他いくつかのオーディオ的要素をチェックしながら聴いている。

 音楽ファンは、音楽が主で、オーディオは従、と考えるだろうし、オーディオファンは、音楽はオーディオを楽しむためのソースのひとつと考えるから、オーディオが主で、音楽が従と考えたがる。音楽優位派は生演奏こそ最高、というだろうし、オーディオ重視派は、生演奏以上のものが存在する、というだろう。しかし、実際のところは、音楽とオーディオは別個の趣味と考えた方がいい。すばらしい生演奏もあれば、生演奏では絶対不可能な音(音楽)世界をCDなら表現できるということもある。

 結局、両方の考えを認めて、音楽、オーディオ両方のファンとして、それぞれを楽しんだほうが2倍お得のような気がする。私のまわりにも絶対音感を持ってて、楽器演奏ができて、それを基準にオーディオを楽しむ人間もいるし、オシロスコープや周波数測定器を持ち出して、すばらしいオーディオシステムを組み、そこで音楽を楽しんでる者もいる。どちらもお互いを認めることで、すばらしい趣味・道楽を楽しんでいるのだ。


■CDの音はすべて同じか?
 さて私のオーディオソースの99%はCDメディアである。規格化されたCDメディアはほとんど文句のつけようのない優れた音楽記録媒体である。ところで、あまりオーディオに関心を示さない方は、CDに入ってる音楽の音質はみんな同じだと思ってるのではないか。デジタルだからみんな同じ、というような考え方で済ませてるんじゃないかな。もちろんそれで満足ならいいのだが・・・

 別項でも述べたとおり、CDへの収録方法がなってなければ、それなりの音でしか収録はされない。だからソースによって音質に差異が生じることは当然ある。ところが面白いのは、同じアーティストの全く同じアルバムでもCDによって音質が違うということがあるのだ。

 私はロック中心なので、その分野の話をするが、最近、昔のロックのアルバムを「リマスター版」と称して再発売することが増えている。CDは今から20年以上も前に産声をあげたが、当時のCD収録と現在のCD収録では技術的に違いがあり、再編集して収録した現代版の方が総じて音がよくなっている。

 ということで、私もお気に入りのアルバムは買い換えるということをけっこう行っている。ところがこのリマスター版はなかなかの曲者で、なかには昔の盤より音が悪くなってるのも存在するのだ。笑ってしまうのだが、ボーカルの声が編集で別人になってしまってる、なんてのも存在している。

 ここでのオーディオファンの楽しみは、これらの聴き分けのできるオーディオ装置と自身の耳を持っているかということである。そうであるならめでたいし、そうでないことをよしとしないのであれば、もうちょっとオーディオをいじってみるのも楽しみが広がるように思う。


■オーディオにいくら投資したらよいのか
 
私のまわりにも諸般の事情で今はミニコンポでガマンしてるけど、ほんとはしっかりコンポを組みたい、という人間は多い。で、「いくらくらい出せば、いい音で聴ける?」と質問されることが結構ある。これはその人の耳のレベルや聴くジャンルで異なるから一概に答えられない。でも最低ミニコンポと差をつけたければ、CD・アンプ・スピーカーで20万円は出してほしい。もちろん、これ以上になれば、音もさらによくなっていくが、違いはだんだんわかりにくくなってくる。逆に10万、15万しか出さないとなると、ミニコンポはコストパフォーマンスがいいので、差が生じにくい。ミニコンポのままでいいじゃん、ということになる。

 楽器をやってる人は自分の音を持ってるし、耳も肥えてるから、少しアドバイスを変えている。「
あなたの使ってる楽器と同額のオーディオシステムを組めば満足できますよ」。つまり、50万のギターを愛用してる人は総額50万のステレオ、100万のピアノを弾いてる人は総額100万のステレオでだいたい見合う。しかし、1000万のバイオリンを持ってる人には1000万のシステムかというと、そこまでかける必要はないかな(笑)。

 それとオーディオは金をかければ音がよくなるというものでもない。私のメインスピーカーは自作で2本で25万円くらいだが、2本で100万円以上する市販スピーカーにも負けないと思う。やりようで安くてもいい音質で楽しむこともできるし、その逆もあるのがオーディオだ。だからいじり甲斐があるのだ。

 最後になったが、原音再生に準拠する私のオーディオ再生の理想は、@臨場感ある生演奏、あるいはアーティストの意図を100%反映したスタジオ録音によるソースの入手。Aそれらに極力手を加えることなく、ありのままに再生をするシステム環境の実現。ということになる。このサイトの考え方もこれに準拠している。同意いただければうれしいし、違うなと思われる方は、それを参考に自身の理想実現に向かって、楽しんでいただければなによりと考えている。


χανι